人はなぜ寝言を言うのか?寝ている間の脳の不思議な働き

生活

寝ているはずなのに、突然「うーん…やめてよ!」とか「ふふっ…」なんて声が聞こえてくること、ありますよね。
隣で寝ている人の寝言にびっくりしたり、逆に自分が寝言を言っていたと聞かされて恥ずかしくなったり…。でも、なぜ人は寝ている間に寝言を言うのでしょうか?

今回は、「レム睡眠」と「脳の整理」というキーワードから、寝言のメカニズムをわかりやすく解説していきます。実は寝言って、私たちの脳がちゃんと働いている証拠なんですよ。


寝言とは?ただの「寝ぼけ」じゃない!

寝言(英語では “somniloquy”)とは、睡眠中に無意識のうちに言葉を発してしまう現象のことです。
しゃべる内容はさまざまで、単語だけのこともあれば、会話のように流暢に話している場合もあります。中には、まるで誰かと口論しているような寝言を言う人も。

寝言自体は特別な病気ではなく、ほとんどの人が一度は経験しているといわれています。
ただ、その背景には「脳の働き」が大きく関係しているんです。


寝言が起きるのは「レム睡眠」中が多い

人の睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2つの状態が交互にやってきます。

  • レム睡眠(REM sleep):脳が活動的に動いていて、夢を見ていることが多い状態
  • ノンレム睡眠(Non-REM sleep):脳がしっかり休んでいる深い眠りの状態

寝言が起きやすいのは、この「レム睡眠」のとき。
レム睡眠中は、身体は休んでいても脳は活発に働いており、夢を見ていることが多い時間帯です。つまり、寝言は「夢の内容を口に出してしまっている」可能性が高いんですね。

例えば、夢の中で誰かと話しているとき、その会話の一部が現実世界に漏れ出して寝言として発せられる…というわけです。
レム睡眠中は、脳が一時的に“覚醒”に近い状態になることもあり、思考や感情が活発に動くので、口の筋肉もわずかに反応してしまうんです。


脳は寝ている間に「整理整頓」している

寝言に関係しているもう一つのキーワードが、「脳の整理」です。
人間の脳は、眠っている間にその日の出来事や情報を整理して、必要なものを記憶として定着させ、不要な情報を消去しています。これはまさに、脳の“お片づけタイム”。

この整理作業が行われるのも、レム睡眠のタイミング。
夢を見ている最中、脳内では記憶の断片がバラバラに呼び起こされて結びつけられています。その過程で、感情や会話の記憶も再生されるため、思わず「その時の感情」や「言葉」が口から漏れ出してしまうことがあるんです。

つまり、寝言は脳がしっかり整理整頓をしている証拠。
「今日あったことを整理してる最中に、ちょっと独り言が出ちゃった」みたいなものなんですね。


レム睡眠中の脳は“夢の舞台監督”

レム睡眠中の脳は、実はかなり忙しい状態です。
記憶や感情、思考を統合しながら、まるで映画監督のように夢を作り出しています。

このときに使われるのが、私たちが起きているときに使うのと同じ「言語中枢」。
つまり、夢の中で誰かと話しているとき、脳の言語を司る部分(ブローカ野など)が働いて、実際に「会話している感覚」を作り出しているんです。
その働きが強くなると、実際に口の筋肉が動いて寝言として発声してしまう、というわけ。

「夢の中で話している自分」と「寝言を言っている自分」が、ほぼ同時に存在している。なんだか不思議ですよね。


ノンレム睡眠中にも寝言は起きる?

実は、寝言はレム睡眠だけでなく、ノンレム睡眠中にも起こることがあります。
ただし、その場合は夢とは関係なく、脳の一部が“中途半端に目覚めている”ような状態で発生するんです。

このときの寝言は、レム睡眠中のように内容のある会話ではなく、「うーん」「あぁ…」などの単語レベルが多いです。
脳が完全に眠っていない状態なので、体が反応して音を出してしまうイメージですね。

つまり、寝言には「夢に関連するタイプ(レム睡眠中)」と「脳の中途覚醒タイプ(ノンレム睡眠中)」の2種類があるわけです。


寝言はストレスや疲れのサインでもある

寝言を頻繁に言う人は、少しストレスや疲れが溜まっている可能性があります。
レム睡眠中の脳の活動が活発になりすぎて、感情の整理が追いついていない状態なんですね。

特に、仕事や人間関係などで強い感情を抱いた日や、不安・緊張が続いているときは寝言が増えやすいです。
また、寝る直前までスマホを見ていたり、カフェインを摂りすぎたりするのも、脳を興奮状態のまま眠らせてしまう原因になります。

寝言が増えているときは、脳が「ちょっと整理しきれないよ!」とサインを出しているのかもしれません。


寝言を減らすにはどうすればいい?

寝言自体は基本的に害はありませんが、あまりにも頻繁だと睡眠の質を下げてしまうこともあります。
以下のポイントを意識すると、脳が落ち着きやすくなり、寝言も減るかもしれません。

  • 寝る前はスマホやテレビを見ない(脳を刺激しない)
  • カフェインやアルコールを控える(興奮を抑える)
  • お風呂でリラックスして副交感神経を優位にする
  • 寝る前に軽いストレッチや深呼吸をする
  • 寝室の照明を暗くし、温度を快適に保つ

特に、レム睡眠の質を高めることが大事。
ぐっすり眠って脳がしっかり整理できれば、寝言も自然と減っていくはずです。


寝言の内容は信用できる?

「寝言で本音を言う」なんてよく聞きますが、実際のところ寝言は脳が無意識に情報を整理しているときの“ノイズ”に近いものです。
つまり、寝言の内容=本音とは限りません。

脳の断片的な記憶や感情が勝手に組み合わさって出てくるだけなので、現実の思考や感情とはズレていることが多いんです。
たとえば、「嫌い!」と寝言で言っても、それは夢の中の登場人物に対しての発言かもしれません。
起きてから責めるのは、ちょっとかわいそうかもですね(笑)。


まとめ:寝言は「脳ががんばっている証拠」

人が寝言を言うのは、「レム睡眠」中に脳が活発に働いて、「脳の整理」をしているから。
夢の中での会話や感情が、現実に漏れ出してしまうことで寝言が生まれます。

寝言は決して「おかしな現象」ではなく、むしろ脳がきちんと情報処理をしている証拠。
ストレスが多いと寝言が増えることもありますが、それは脳が頑張っているサインでもあるんです。

もし最近寝言が増えたと感じたら、睡眠環境やストレス状態を見直して、脳に「ちゃんと休む時間」をあげてくださいね。
今日もゆっくり眠って、明日の自分をリフレッシュさせましょう。


寝言は、あなたの脳が“今日を整理して、明日を迎える”ための声。
そう思えば、ちょっとかわいく感じてきませんか?