夜になると悲しくなる理由|メラトニンと孤独感の関係

体の仕組み

昼間は元気だったのに、夜になると急に心が沈んでしまう――。
そんな経験、誰にでもあるよね。
理由もなく切なくなったり、過去のことを思い出してしんみりしたり。
実はこれ、気のせいじゃないんだ。
夜になると悲しくなりやすいのは、脳内ホルモン「メラトニン」と、心理的な孤独感が深く関係しているんだよ。

夜になると気持ちが沈むのは自然なこと?

まず最初に言っておくと、夜に気分が落ち込むのは「異常」ではない。
人間の体は1日のリズム(体内時計)によって、朝から夜にかけてホルモンの分泌が変化するようにできている。
その中で、心や気分にも影響を与えるのがメラトニンという物質だ。

メラトニンは「眠りのホルモン」とも呼ばれていて、夜になると分泌が増え、体を眠りモードに導いてくれる。
でもこのホルモン、単に眠気を起こすだけじゃなく、感情のトーンを落ち着かせる作用もあるんだ。
つまり、心のテンションが少し下がるのも、メラトニンの自然な働きのひとつなんだよ。

メラトニンが感情を“静かに”する仕組み

メラトニンは脳の「松果体(しょうかたい)」という部分で作られる。
このホルモンは、光の量に反応して分泌が変わる。
日中は太陽の光を浴びることで分泌が抑えられ、夜になると暗さを感知して分泌が増えるんだ。

このとき、メラトニンは脳の中の神経活動をゆっくりと静め、身体と心を“休息モード”へ切り替える。
その結果、集中力や活動意欲が落ち着き、同時に感情も穏やかになる。
だけど、裏を返せばそれは「感情のブレーキがゆるむ」ということでもあるんだ。

昼間は忙しさや刺激が多くて気づかなかった寂しさや不安が、
夜の静けさとともに一気に表に出てくる。
これが「夜になると急に悲しくなる」メカニズムのひとつ。

夜は「孤独感」を感じやすい時間帯

もうひとつの大きな要因が、孤独感
夜は周囲の音も減り、人の気配が少なくなる時間帯。
スマホを見ても連絡は止まり、外を見れば真っ暗。
そんな状況の中で、脳は“自分一人だけ”という感覚を強く意識しやすくなる。

心理学的には、人間は「静寂」と「暗さ」に孤独を感じる傾向がある。
昼間のように視覚的・聴覚的な刺激がないと、脳は内側に意識を向ける。
その結果、過去の後悔や不安、未来への心配などが浮かびやすくなるんだ。

特に現代はSNSの影響で「他人の楽しそうな投稿」と「自分の静かな夜」とのギャップが強調される。
これがさらに孤独感を増幅させ、「なんだか虚しいな…」という感情を引き起こしてしまうんだ。

脳の中では何が起きているの?

夜になると、メラトニンの分泌が増えるのと同時に、
日中に活発だった「セロトニン(幸せホルモン)」の働きが弱まる。
セロトニンは気分を安定させ、ストレスを和らげる作用を持っているけど、光を浴びないと作られにくい。
だから、夜はメラトニンが増え、セロトニンが減るという“気分の揺れやすい時間帯”になるんだ。

つまり、脳内では「活動→休息」への切り替えが起きていて、
感情面では少し“落ち込みやすい状態”になっているということ。
決してメンタルが弱いわけじゃなく、これは生理的に自然なことなんだ。

孤独感とメラトニンの相互作用

実は、孤独感を感じると体内のホルモンバランスにも変化が起きる。
人とのつながりを感じると「オキシトシン」という幸福ホルモンが出て、ストレスが軽減される。
でも孤独を感じていると、このオキシトシンの分泌が減り、
逆にメラトニンの作用が強く出やすくなるという説もある。

メラトニン自体は悪いものじゃないけど、
過剰に働くと「眠気」だけでなく「無気力」や「感情の低下」にもつながる。
つまり、孤独感が強いほど、夜に悲しく感じる度合いも大きくなりやすいんだ。

夜の“静けさ”が思考を深める

夜は人間の脳が“内省的”になりやすい時間でもある。
外からの刺激が少ないぶん、自分の内面にフォーカスしやすくなる。
この状態はときにネガティブに感じるけど、実は悪いことばかりじゃない。

心が静まる夜には、普段見落としていた感情に気づいたり、
自分の本音に耳を傾けたりするチャンスでもある。
悲しみは心のメンテナンス。
夜の孤独は、あなたが“自分自身と向き合う時間”でもあるんだ。

悲しさをやわらげるための夜の過ごし方

とはいえ、夜の悲しさが強くなりすぎると眠れなくなったり、考えすぎてしまうこともある。
そんなときは、ちょっとした工夫で気持ちをやわらげてみよう。

1. 光をうまく使う

寝る前にあまりにも真っ暗にすると、メラトニンが急に増えて気分が落ち込みやすくなる。
間接照明や暖色系のライトを使って、ゆるやかに“夜モード”へ移行させるのがおすすめ。
逆に、寝る直前までスマホのブルーライトを見ていると、メラトニンの分泌が乱れてしまうから注意だよ。

2. 音を取り戻す

完全な静寂は孤独感を強める。
好きな音楽や環境音を流して、空間に「音のぬくもり」を作ってみよう。
ゆったりとしたリズムの曲は、メラトニンの働きを自然な形で促しつつ、心を穏やかにしてくれる。

3. 誰かと“軽く”つながる

長文のメッセージを送る必要はない。
SNSで「今日もおつかれ」と一言つぶやくだけでも、脳は“社会的なつながり”を感じる。
オキシトシンが少しでも分泌されれば、孤独感はやわらぐんだ。

4. 香りでリラックス

ラベンダーやカモミールなどの香りには、心を落ち着かせる効果がある。
アロマやハンドクリームで香りを取り入れると、
嗅覚を通じて海馬や扁桃体(感情を司る場所)が刺激され、安心感が生まれる。

夜の悲しみを「悪いもの」と決めつけないで

夜に悲しくなるのは、心が壊れているからじゃない。
むしろ、心がちゃんと“休息モード”に切り替わっている証拠なんだ。
メラトニンが出て、脳が静かになり、外界とのつながりが減る――。
その状態で孤独を感じるのは、ごく自然なこと。

でもその静けさの中にこそ、自分の本音や大切な記憶が隠れている。
夜の悲しみは、次の日に向かうための「心のリセット時間」でもあるんだ。

まとめ|メラトニンと孤独がつくる“夜の感情”

夜になると悲しくなるのは、メラトニンが分泌されて心と体を休ませる準備をしているから。
そして同時に、外界との刺激が減ることで孤独感が強まり、内面の感情が浮かび上がってくる。
それは人間として自然な反応であり、あなたの心が正常に働いている証なんだ。

悲しい夜を無理に消そうとせず、少し優しく受け入れてみよう。
その静けさの中で、心は少しずつ整理されていく。
やがて夜が明けるころ、心の中にも少しずつ光が差し込んでくるはずだ。